雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.1 旅路二季節ガ燃エ落チル / eastern youth (1998)

 傷口は未だふさがらず、あれから十年は経過したか。私は相変わらず地下鉄に揺られ、どんな表情を浮かべて良いかも分からずに、ただイヤホンから流れてくる音楽に傾聴する。ささくれだった私の心を砥石で研ぎ均すかのようにその音と叫びをいつまでも繰り出し、そして均された私の心は少しだけ安堵を覚える。

 あの真夏のターミナルでの痛み、アクセルを踏み込めどどこにも行くあてのない走り、詰まるところは全ての叫び。何も変わってはいない。

 飲み込んで飲み込まれて、鉄くずを胃に収めたかのようにして身体の芯は重く、そして吐き出す物は血のみ。吐き出された血は時間の道に跡を残し、それを辿れば辿るほどに、色はどす黒く沈んで行く。傷口からの鮮血はどこまでも赤く、止まりようのない染みの拡がりに、ただわななき悲しむのみの時間と経過。

 もう終わってしまったことなど何もない。呼吸の続く限りは何も止むことはなく、私は毎日ひたすらにカレンダーをめくり、その紙の上に記された痛みの記号をゴミ箱に放り投げる。日は重ねられ、私は歳をとり、気がつくと周りには子どもたちがあふれ、ただ私だけが一人、案山子のようにして一本足で何も出来ずに立っている。

 実りあれ、子どもたちよ。すでに枯れてしまった畑の中で立ち尽くし、降られた雨がじくじくと布の表面から流れて落ちていく様は、やはり血のそれではないか。遠巻きに眺める子どもたちの視線を受け、その視線を確かに持っていた私の昔というものを振り返った先に、あの眼がある。

 もう一度伝えよう。実りあれ、子どもたちよ。地下鉄に揺られ運ばれた先にある廃工場で、ただたたずむだけの私と、走り回る子どもたちとの差はどこに生まれたか。血よ。身体を流れる血よ。私にも子どもにも同じものが流れていると、どうか信じさせておくれ。証明を得るために全てを流せというのならば、私は何もためらわない。灼熱の下、畑に立ち、そしていつまでも祈り続ける。流れてしまえ、私の全てよ。

(811文字) 

 

旅路ニ季節ガ燃エ落チル

旅路ニ季節ガ燃エ落チル