雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.2 Workbook / Bob Mould (1989)

ボブ・モウルドは歌う。成功することの困難を。一人きりであることの孤独を。

ハスカー・デュー解散後の一人旅を一枚のディスクに封じ込め、自らの感情を素直に楽曲に投影していく。アコースティックギター一本で奏でられる、天使の梯子でもある「Sunspots」に始まり、突然の嵐のように「Wishing Well」になだれ込む。そう、ボブは一度神に見捨てられた。梯子を登ることを赦されず、混沌の下界での呼吸を余儀なくされた。その状況の中で、ただ一人淡々と、そして時折取り憑かれたかのように弦を掻きむしって歌い上げる。俺はここだ。誰か見つけてくれ、と。

紡ぎ出される音に揺さぶられるこの感情は、一人であることの厳しさを突きつけられるからなのだろう。自らを愛しているか?愛することの出来る誰かがそこにいるか?

問い詰められ、答えに窮する自分がいる。それでもボブは鞭を振るう手を休めない。「ほら、お前には何も見えてはいない」と嘲笑うかのように、次々と内面をえぐる曲を繰り出していく。逃げ出したくなるような切迫感で覆われた塊の中、ただ一筋の光が与えられる。それがおそらく神から唯一与えられたギフト。「See A Little Light」。聴け、音楽はここにある。この大気の中に音は委ねられ、どこからかあなたの声が聞こえてくる。

そう、音は届いている。痛みに耐えながら、それでも希望を失うことなく光の差す下へと地を這ってでも進む。その音源という光を痛みの中に見出しながら歩を進める。聴く者の背中を押し、杖となる。孤独であることは恐れるものではない。それすらも天から与えられし生きる道なのだ。一人であることを誇りに思え。自らの足で立てることを誇りに思え。ここにあるのは、かつて孤独だったボブからの福音。確かに受け取った。

(714文字)

 

Workbook 25

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