雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.4 love to sleep / dip (1995)

自分は「入り込む不安と明日を憂い」ながら生きている。頭上の雲はいつまでも放たれることはなく、最後の晴天はいつだったのかも思い出すことすら出来ない。薄曇りの空の下、ガラスで出来た時間の上をおっかなびっくり歩くその姿は、見る人からすれば非常に滑稽この上ないのだろう。

デジタルの時計は過去を記憶させることを拒絶し、アナログのそれはただ円周をひたすらになぞるだけの動き。他に時間を表す術はどれも不確定で、その不確定の上に乗り移ろうとしている自分は、やはりこれまた滑稽に映ってしまうものなのだ。

歪みを知らない時間と相反するように、自分はただひたすらに歪んでいく。振り返った足元に残るものは何もなく、どこからやってきたのかその記憶すらも曖昧で、ただ進むことだけを許され、それに従い次の一歩を踏み出す。踏み出した先の道に標はなく、登るでもなく下るでもなく、ただ道しかない道の上でとどまることもなく、あてのない先を目指す。

目指すものとは何か。考え、天を仰げども曇り空。影すらも作られることのない光霞む地上にて、はて、これは本当に地上なのかと疑うも一瞬、その疑念さえもやはりすぐに記憶から消されていく。

一つだけ分かることがあるとすれば、それはとにかく自分は不確定の下に生きることを命じられ、背中を押すものはと言えば時間のみで、急き立てられるでもなく、余裕を持つわけでもなく、だた過ぎていくその手に取れない何かによって「すすめ」という信号に従って歩いて行くのみ、ということだけなのだ。

次の「すすめ」、そのまた先の「すすめ」、延々と続く「すすめ」。愛する過去すら持つことを許されず、その命ぜられるままに時間を潰していく。ただ点々と続いていく青信号に従い、雨すら降らぬ曇天の下、自分が塗ってきた色も知らされずにどこまでも進んでいく。次の色はどこだ。そのヒントすら与えられる間もなく。


(889文字)

 

love to sleep(再発盤)

love to sleep(再発盤)