雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.6 メカクシティレコーズ / じん(自然の敵P)(2013)

少年少女たちは前を向き続けることが出来るか。

この作品の中で作り込まれている世界ははただの寓話、現代のお伽噺。ピーターパンたちはいつまでも一つの世界、一つの人間関係の中でのみ物語を紡ぎ出し、その時代を忘れてしまった大人たちを敵に回す。自分が持っていると信じて止まない能力を信じ、持て余し、それを使うことで人を傷つけそして誰かを救う。非常に狭い、数人だけが作り上げるサバイバルな日常。この実現代から少しズレた世界の中で子どもたちは戦う。誰と?

力を持っていると信じ切ること。大人たちはそれを勘違いと呼び、現実を見ろと突きつける。自らも否応なしに成長と共にどこかに置き忘れていってしまった力を忘れ、悲しくも今に生きる。少年少女たちは大人の理屈を必要とはしない。自分が持っている力こそが全てであり、その力を小さな身体の全てから放出し、叫び、涙し、抱き合っては喜ぶ。感情の起伏、喜怒哀楽こそが力という全てであり、ニュートラルであることは死にも等しい虚無の世界にしか映らない。

少年少女たちはやがて力を失っていくことを薄々感じ取っている。だからこそ毎日に小さな爆弾を持ち歩く。信管を抜いた飾り付けのボムは自分の力を守るためのバリア。同じ飾りを持っている誰かを毎日探しながら、小さな冒険を続ける。飽きることなく求め続ける。不完全なボムをいつかどこかで爆発させることを夢みて、信管を持つリーダーを見つける旅に出る。それが日々。

やがて現実と日々は逆転し、あの飾り付けのボムもどこかへと置き忘れてしまう。信管を持つリーダーなどというものはどこにもいないと思い知る。それが夢の終わり。やがて悲しいまでに大人という現実に生きる「人間」になり、子どもたちに対して同じことを繰り返し問い詰める。お前たちの先にあるのは現実であり、力は単なる妄想に過ぎないと。それが人の成長。前を見ていたはずの少年少女たちは、やがては時間に飲み込まれ足を止める。ネバーランド、ロスト。力は夢。彼ら彼女らだけに許された、ごくわずかな時間を生きるためのパスポート。有効期限つきの儚いパスポート。

(860文字) 

メカクシティレコーズ

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