雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.7 靖幸 / 岡村靖幸 (1989)

ピンキッシュブルー。

男性諸氏、いや、僕らは間違いなく性欲に左右される日々を送ったことがあり、それを昇華させる術を色んな形で試行錯誤してきたはずだ。だから、中年のオッサンが仕事帰りでぐったりしている地下鉄の中で、身をすりあわせていちゃいちゃしている高校生カップルなんかを見たあかつきには、「あぁ、そうだよな、青春ってそういうことなんだよな」とつい納得してしまう。10年も前だったら「若者よ、そこで爆発して消え失せてしまえ!」などと心の中で悪態をついていただろうに。いちゃいちゃするなら誰も見ていないところでやれ、と。

誰も見ていないところでのいちゃいちゃ?

いやいや、それはなんともさびしい行為じゃないか。あまねくカップルは、白日の下に晒すかのように、世間に訴えかけなければならない。僕らは幸せなんだ。僕らこそが世界なのだ、世界の中心で愛を叫んでいるんだ!と声高にいちゃいちゃしなければならない。

そうか、世界ならば仕方がない。その小世界の中心で愛を叫べ。いや、まだまだ愛ともいえないその未熟な触れ合いを何と呼べばよい。恋?そんな手垢のついた言葉で語るのでは、彼ら彼女らがかわいそうだ。もっと温い眼差しを送ってあげられるよい言葉はないか。それこそがピンキッシュブルー。ピンクという色にどっぷりと浸かり、些細なことでブルーになってみてはお互いをなめあい、そしてさらなる密着度の極みへとつながっていく。ピンクとブルーの間をぐるぐると回っている間にバターになってしまうかの勢いで、その回転エネルギーを、やがて来るオトナの情愛の種に変えてしまえばいい。

だって青春でしょ?すべては彩られ、それらをバリアとして二人だけの世界を築いていく。色で塗りつぶした恋愛保護色。彼ら彼女らを包む色、それこそがピンクとブルー。ピンキッシュブルーで若者よ、輝かしいいちゃいちゃ空間を作っては、見知らぬ誰かのジェラシーを誘い出してしまえ。世界のピンクとブルーは君たちだけのためにある!

 

(819字)

 

靖幸

靖幸