雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.9 Ashes Are Burning / Renaissance (1973)

アニー・ハズラムの声があれば、音は美に堕ちる。

プログレッシヴ・ロックにカテゴライズされることの多いRenaissanceだが、実際にここに繰り広げられる音の饗宴はむしろフォークシンフォニックロック。そしてそれは力強くも繊細な楽器隊と、主人公の一人でもあるピアノの音に支えられている。牧歌的な輪舞曲、有機的な音は五線譜を巡る。音における美とは何か、その答えの一つを持っているのはこのボーカルワークだろう。転がるように駆け巡る声は、聴き手の耳をどこまでも遙か遠くの空へとつなぎ、音と共に届けていく。ここではない、どこか異国の空へと。

やがて降り出すだろう雨は、雲と共に近づき、空に蓋をする。閉じられた空の元であっても、アニー・ハズラムの声は揺らぐことがない。雨に乗り、空(くう)を歌い、大地を歌い、大河を歌う。声はやがて海へと流れ、青と青とが邂逅する境界線へと伸び、緩く、そしてしなやかに消えて行く。

場面は目まぐるしく変化を見せ、時に穏やかに時に緊張感を持って、その声を支えるべく展開する。一本の芯。さながらこの女王の声を支えるためにと、演者もひざまずいては従事する力を持って臨む。楽隊に行進はない。女王を取り囲み、雑なるものを弾き返すかのように凛として立つ近衛兵。高みへと祭り上げる。

全てはこの声に魅せられた者による中毒の音。甘露は毒にもなり、またやはり甘露である。小王国の音世界による中毒。聴くは盛られた毒への抵抗。やがて体内に蓄積されては、二度と手放せなくなる。そう、全ては女王の美なる声のコントロールの下に。

(754文字)

 

Ashes Are Burning

Ashes Are Burning