躁と鬱の波間に踊り狂う小舟は、その間に何の果実を搾り取るのか。人生の実。暴れる船首で航路を見据えながら、一囓りくわえ込んでは咀嚼もせずに飲み下す。甘露と苦味。揺れ動く二つの道を選択する船頭はどこへ消えた?
言葉の渦。迂回は許されるはずもなく、否応なしに選択を迫られる。渦に東西南北はなし。どの道を選ぶ、どの言葉を選ぶ、どの歩みを選ぶ。あらゆる道筋を制覇することの出来る変化(へんげ)を手にするのであるならば、渦もまた一本の線に戻ることだろう。それこそが力。今こそが波と渦を制覇する時。日は永遠には続かない。時を極めろ。
That's the way life is.
ここまでが一つの夢、人生の蒔絵。散らされた色に惑わされ、道を見失っている者がここにいる。時を極められずに力も蓄えられるはずもなし。一艘の舟で漕ぎ出す大海に海図なし。また再び夢に飲み込まれ、同じ位置から一歩も踏み出せずに躊躇するか。二本の足が使いものにならないというのであれば、その二本の腕で這いずり回れ。蝸牛の標しのように、砂の上には身体を引きずる跡が残る。それが再び渦を巻く時、舟はやはり水際でお前を待っている。乗り込まざるを得ない舟が。
消えた船頭は消えたお前自身。凪ぐことのないその大海は荒波。二本の櫂を握りしめ、覚悟を決めよ。船底にあるのは一房の果実。それは十分な力の源。道を過つな。敵は単なるお前の躁と鬱。波に屈服することなく、消えてしまった海図の先へとたどり着け。踊り狂いながらお前の渦を作り出せ。