雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.34 波よせて / クラムボン (2006)

雨。

水たまり。長靴を履いた子どもが飛び込み、数多のミルククラウンが飛び散る連鎖。歩幅と不規則な波。よせて返してまたよせる。飛び出した先に大きな水玉模様。やがて降り落ちた雨と共に太陽が全てを吸い込み、雲へとあずけて海へと返す。

ドラムロールの小太鼓。小さな波紋を皮の表面に作り出し、音の波を空気中に飛び散らせる。スティックは細やかに表面を叩き、波動をコントロールする。そして静寂。波動はやがて消えゆき、ただのしんとした空気となる。

波の数々、数えきれず。ああ、電線が風に踊らされる、それもまた波。

海、波ならば。

飲み込めるだけの波を飲み込んで、僕は波打ち際を一人歩く。サンダルによせる波ギリギリの線をなぞるように、そして背後では足跡が次々と波に食べられていく。全ての波を飲み込んできた僕は、波に餌を与えながら歩く。餌をものにした波は、遠くまで引いて行きその餌を子どもへと与える。嬉々として餌を食べる小波は間もなくうねりの子どもと育っていく。

やがて来る大波への用意は万全か。浮かんでは待つサーファーよ。

沖合のヨットは風の流れに身をまかせ、海面の上下と共に浮かぶ。大波小波。遠目には緩やかに。

さあ、そろそろ来るぞ。波が、大波が。やがて共食いに走った波どもが、狂いに狂って襲いかかるぞ。準備はいいか。

波打ち際。餌を与えることに飽きた僕は、ただ立ちつくし、波の行方を見遣る。ああ、餌を与えただけだというのに、波はいつの間にか心を失い、飲み込めるもの全てを飲み込んでいく。ひたすらの共食い。太陽は何も出来ず、北風は何も出来ず、波はただ全てを波に変えて、遠く地表へと。

さぁ、波が、

 

 

波に足を踏み込む。くるぶしを避けてはよせる波の成れの果て。波紋を作り、砂を削り、そしてまた餌を運びに沖へと向かっていく。永遠の営み。僕は一瞬に餌を与えただけの通りすがり。波よせて、波は時を知らず、ただよせては返す、波の営み。

(797字)

 

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