雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.45 ストレンジ カメレオン / the pillows (1997)

果たしてこの40年で僕は何色に染まっただろうか。気がつけば手元には何も残らず、今度こそはと無闇に歯を食いしばり、そしてガス欠を起こしては自ら白旗を揚げるというこの失われた20年間を、一体何色にたとえればよいだろうか。旗の色の通り、白一色なのだろうか。それであるならば、まだ何色かに染め上げる余地も余力もある。

誰かを染め上げようともせず、誰かに染められることもなく、ただ一人、小さな生物になったかのように、人目につかないようにと洞(うろ)の中でじっとしていた。気がつけば身体はやはり保護色に染まり、そして闇の中で自らの視力も失っていった。いつか自分を引き上げてくれる白い糸が降りてくるのを待ち続けながら、何もせずにじっと息を潜めていた。

動くだけの力はあった。実際に動いてもみた。それでも周りは何も変わらず、そもそも自分が変わらなかった。変わりゆく人々を見ては羨ましがり、時に嘲り、そして自分を鑑みることを忘れていた。気がつくと、そんな小さな生物に成り下がっていた。命だけは辛うじて与えられ、そして誰の目にも止まることのない小さな小さな存在に。

保護色の居心地は決して悪くはなかった。達観したつもりで静観し、自ら発言することを惜しみ、ただ風の吹くままに身をまかせた結果、その風もまたやがては微風となり、洞の軒先に掲げてあった旗もはためくことを忘れてしまっていた。唯一の、僕はここにいるという目印であった旗も。

それでも誰かの目に止まることを怖がっていたわけではない。その期待に応える力を持ち合わせない自分の無能さに苛まれ、そしてすぐに白旗を揚げることを覚えてしまっただけの話。彼らには僕は何色に見えていただろうか。玉虫色とも言えない、けったいな色彩を身にまとった、ワンノブゼムの人間でしかなかっただろうか。

それでも後悔はしない。そう。白い糸は確かに垂れ下がっていた。それを引き千切っては、地面に落とすことを繰り返していただけの話。そしてまた糸が垂れ下がる。今度は引き千切らずにその糸を登っていくことが出来るだろうか。保護色は空の色に染まり直し、そしてやがてたどり着く何かの色へと再び変わる。そんな変化を何度も繰り返すことに怖れを抱くことなく、洞から出られるだろう。身体は小さなまま生物のままでいい。ただ、希望の色に染まれることだけを信じて、洞から出てまた光を浴びよう。

(980字)

 

Fool on the planet

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