雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.46 土用波 / 中島みゆき (1988)

耳を塞ぎしゃがみ込んでしまった君の愛
返すあてもなくさまよい続け
僕らは陰を探すのに疲れ果てた
まだ終わろうとはしない鋭い陽射し
目の前の大海はやけに騒々しく
声にならない声を打ち消してしまう

うねる感情 沈む愛情 痛ましい時間
かつては満たされたはずの心を波が削ぎ落としていく
空気の抜けたテニスボール
弾むはずもなくただひしゃげた形で地面へとへばりつく
太陽の圧力 大気の圧力 愛の圧力
これほどまでに重いものだったか
何も口にしようとしない君からは何も聞き取ることは出来ず
固く閉ざされた瞳は何もかもを映し出すことを拒絶している

途方に暮れるなどという甘い感傷はすでに磨り減り
無言の諍いはいつまでも続く
研ぎ澄まされた爪は僕の肌を切り裂くためのもの
傷つけることが愛の終わりだというのであれば
いくらでも爪を立てればいい

動くことなく座り込んでしまった感情
全てあの沖へと放り投げてしまえ
使い捨てる季節のラブゲームのように
僕らの愛は簡単ではなかったはずだ
波はいくら昂ぶろうと砂を海へと引き込み続けるだけ
砂を噛んでいる僕らが飼っているのは愛の土用波
季節を終わらせることだけが目的

きっかけなどは必要ない
荒ぶる波を二人して飼っていれば
打ち消し合うことのない巨大な波を飼っていれば
そのうちに終わる
今はそれを静かに待つ
目の前の土用波を僕一人だけが見つめながら

(557字)

 

中島みゆき

中島みゆき