雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.23 SEND AWAY THE TIGERS / MANIC STREET PREACHERS (2007)

僕は洋楽を歌詞では聴かない。そもそも高校時代に英語アレルギーが出来て以来、歌詞を読むのにも難儀するし、ヒアリングなんてもってのほか。それがなぜ洋楽を聴くかと言えば、ひとえに歌詞が不明な分、サウンド、語感、感情、立体感、そして色が明瞭に見えてくるからだ。

どのアーティストも立体感と色を持っている。それらが自分の耳が喜ぶ波長を持っているかどうかで、好みが決まる。立体感とはその名の通り、いかに平面にどこまでも広がっていくか、天井の高さをどこまで高く持っているかを意味する。

色はオーラと言い換えてもいいかもしれない。残念ながら僕にはオーラを見る力はないけれども、色ならば見る自信がある。とはいえRGB、CYMKといった記号が意味するところの色ではなく、漠然とした色彩、光彩といった要素で音楽を見る。

MANIC STREET PREACHERSを初めて聴いた時には、とにかく雲一つない空と、その空を彩る、不安を持ったブルーに圧倒された。ああ、何と自然な高さと彩色なのだろうかと。その印象は初めて彼らの音楽に触れた15年前から一切のブレがない。いや、その間には真っ赤に染まって聞こえた作品もあることにはあったが、結局戻ってくるところはブルーだった。

彼らの音は天井を知らず、空の持つ最高地点まで僕を届けてくれる。どれだけヘビーなエフェクターでギターをかき鳴らそうが、音を厚く重ねようが、決して色彩が濁ることはない。いや、濁ることがあり得ないと全幅の信頼を持っているのが、僕にとってのMANIC STREET PREACHERSなのだ。

2007年に届けられた本作『SEND AWAY THE TIGERS』は、一点の曇りもなく、少し色をつけたガラスを通した太陽光が降り注ぐように音が奏でられる。天然の光ではなく、少し味付けをした色のフィルターを通した先に届けられた曲たちが集まっている印象を受ける。

もし僕にオーラを見る力があったならば、これをどんな色の階調で捉えることだろうか。やはり彩度は明るいのだろうか。明るければ良い。自分が持っているイメージとが合致するのだから。この濁りのないロック、少しの悲しみのエッセンスを持ったロック。それが空の持つ青であれば、僕が持った印象はあまりにも当たり前すぎて面白みがないくらいだ。MANIC STREET PREACHERSの色はどこまでも高く、青く、そして僕だけが理解をする世界を持って音を届ける。理想のロックの一つの形として。 

Send Away the Tigers

Send Away the Tigers