雑音万華鏡 -Noiz-

愛してやまない音楽たちにあふれんばかりの情を込めて

Vol.26 quake and brook / the band apart (2005)

軽やかに滑走するギター。複雑に転がり回るドラム。一緒になって暴れるベース。そして一瞬の呟きを歌にしたかのようにたたみかけるボーカル。細かな場面転換を見せる楽曲構成。the band apartは説明に非常に困るバンドだ。

取っつきやすい?-No。一発で分かりやすい?-No。バンドアンサンブルの快感はある?-YES!

基本的には一聴しただけで把握することは困難な楽曲が多いスタイルだが、何度か回を重ねていくうちに、その展開の妙がクセになってくる。とにかくストレートなロックとは言い切れない捻れがあちこちに散りばめられており、スタンダードなロックのマナーに慣れていても初めて聴く者を混乱に陥れることも必定。そのくせ楽曲の展開が一度身体に馴染んでしまえば、もうすっかり虜にされてしまうことも間違いない。

構成を俯瞰してみても、一つとして同じ構造が存在しない。楽曲展開のお約束を完全に放棄し、場面転換を頻繁に行う舞台のように曲を作り上げる。目まぐるしく変わる舞台は、リスナーに中毒を引き起こさせる。バッチリとキマったドラッグのように、展開の渦に巻き込まれて行く。ぴりっと山椒の効いた楽曲構成を見せる存在は、邦楽ロックシーンを見渡してもなかなか他に対等な存在が見当たらない。

複雑な楽曲構成、突然現れる変拍子、それでいて口ずさめるメロディ、バンドとしての疾走感。どれか一つ欠けてもこのバンドの存在を瓦解させてしまうだろうバランス感覚に、リスナーも負けじとついてくる。ライブ映像を見ると、とにかく呼吸の合わせ方が尋常ではない。誰もがthe band apartを理解し、ただノルだけではなく、曲を理解した上で俎上の鯉になっている。そこにリスナーの「パンアパ中毒」を感じずにはいられない。複雑であることがハードルにはならないということだ。

このように「ひねくれたバンド」が陥りがちな「分かる人だけが分かれば良い」という自己満足スタイル は一切なく、あくまでもバンドとしてリスナーをノせることに専念している。カラーはひらすら鮮やかに。とても日本の空気を吸ってこのサウンドを作り出したとは思えないサウンドは、ひたすら乾いた音とともに。そして展開はひたすらクレバーに。その楽曲構成力の奇妙な高さが、このバンドをオンリーワンの存在にしていることは間違いない。

ストレートだけれどもストレートではない。分かりやすいメロディだけれども、展開を掴むのは困難。二律背反を背負ってthe band apartは、その個性を曲げることなく今に至っている。その既に完成されていた萌芽を味わうには、このアルバムはほどよい入口となってくれるはず。中毒になるかならないかは、食べてみないことにはわからないということだ。

(1092字)

 

quake and brook

quake and brook